チーム間交渉の落とし穴

昨日からKITでは、交渉学2クール目となる国際交渉特論が始まりました。

国際交渉といっても、英語で外国人と交渉するとか、国家間交渉をするといったものではなく、国際会議や技術標準策定ではしばしば見られる、多数当事者間交渉のエッセンスをメインに学習するものです。身近なところでは、事業組合、マンションの管理組合の会合や債権者会合などの場で、その効果を発揮できることでしょう。

模擬交渉も、1対1の単独交渉だったのが、2対2のチーム間交渉となります。チームで統一したシナリオに基づいて、それぞれのメンバーが役割を担いながら交渉を進めます。
事前準備としてチームで作戦会議を行うのですが、ここに落とし穴があります。この作戦会議も交渉であることに気付いていないと、チーム間交渉までにシナリオがまとまらないといった事態も起こりかねません。同じ情報シートを読んでいるからといって、皆同じミッションになっているとは限らないのです。

まとまっていないチームで交渉に臨むと、どこかで必ず綻びが出てきて、喩え交渉がまとまったとしても、どこか無理のある交渉結果となってしまいますし、チームメンバーの心には大きなしこりが残ります。
尤も、それらを洗いざらい話して、次の交渉に活かしていけるのが、模擬交渉のいいところです。

実際の知的財産交渉でも、部内打ち合わせや社内調整を行った上で会社間交渉に臨まなければなりませんが、交渉に臨む知財担当と事業担当とでしっかりコミュニケーションを取った上で交渉を進めないと、「隙間」を相手に付け込まれ、交渉を有利に進めることはできないでしょうし、交渉結果が社内で否決される危険性もあります。

チーム内交渉に向けてシナリオを作る時に、一番苦労するのは、BATNA(Best Alternative to a Negotiation Agreement:合意できない場合のオプション)の設定ができないことでした。合意できないからといって、チームを解散するわけにもいかないし、期限はどんどん迫って来ます。社内交渉が会社間交渉よりも苦しいと言われる所以はここにあるのではないでしょうか。
その反面、苦しんでひねり出したシナリオでドンピシャの交渉ができたときには、たとえようのない充実感が得られることでしょう。

そんな心震えるような体験を経営者の皆様と共有できる日が来ることを夢見て、交渉力のスキルアップにいそしんでいます。

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